神戸大学岩田教授の告発動画【全文】に高山医師が反論!相違点はなに?

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神戸大学の岩田健太郎教授がYouTubeに投稿した約14分間に渡るダイヤモンドプリンセス号の船内についての動画が話題になっています。

陰性が確認された乗客が下船する前日に突如降ってわいた船内の感染対策への告発とも取れる動画。

BBC、CNNでもこの動画が取り上げられ放映されました。(現在動画は削除されています)

この動画をめぐって、岩田教授が動画内で言っていた“厚労省で働いている某氏”=高山義浩医師が反論を唱えています。

そこで、岩田教授が動画内で語ったこと、高山医師が反論しているところの相違点をまとめていこうと思います。

岩田教授の動画【全文】

岩田教授が動画内で語った全文は以下の通りです。(一部認識違いなどあるかもしれません、ご容赦ください)


岩田健太郎です。神戸大学病院感染症内科教授をしていますけれど、今からお話する内容は神戸大学など所属する期間とは一切関係なく、私個人の見解です。あらかじめ申し上げておきます。

今日2月18日にダイヤモンド・プリンセスに入ったんですけども、1日で追いだされてしまいました。なぜそういうことが起きたのかについて、簡単にお話しようと思います。

ダイヤモンド・プリンセス号に乗船するまで

もともとダイヤモンド・プリンセスはすごくCOVID-19の感染者がどんどん増えているということで、感染対策がうまくいっていないんじゃないかという懸念がありました。

環境感染学会が入りFETP(実地疫学専門養成コース)が入ったんですけど、あっという間に出ていってしまって。

中がどうなっているか、よく分からないという状態でした。で、中の方からいくつかメッセージをいただいて、すごく怖いと。

感染が広がっていくんじゃないか、ということでわたしに助けを求めてきたので、いろんな筋を通じてなんとか入れないかという風に打診してたんですね。

そうしたら昨日2月17日に厚労省で働いている某氏(高山医師)から電話があって「入ってもいいよ」と。で、やり方を考えましょう、ということでした。

最初は環境感染学会の人として入るという話だったんですけども、環境感染学会はもう中に人を入れないという決まりをつくったので岩田ひとりを例外にできない、ということでお断りをされて。

結局、DMAT(厚生労働省から派遣される災害派遣医療チーム)ですね、「災害対策のDMATのメンバーとして入ったらどうか」というご提案を厚労省の方からいただいたので、わかりましたと。

18日の朝に新神戸から新横浜に向かったわけです。そうしたら、途中で電話が掛かってきて「誰とは言えないけども非常に反対している人がいる。入ってもらったら困る」ということで。

DMATのメンバーとして入るという話は立ち消えになりそうになりました。

すごく困ったんですけど、「何とか方法を考える」ということで、しばらく新横浜で待っていたらまた電話が掛かってきて。「DMATの職員の下で、感染対策の専門家ではなくてDMATの一員としてDMATの仕事をただやるだけなら入れてあげる」という非常に奇妙な電話をいただきました。

なぜそういう結論が出たのか分からないんですけど、とにかく「言う事を聞いてDMATの中で仕事をしていて、だんだん顔が割れてきたら感染のこともできるかもしれないからそれでやってもらえないか」という非常に奇妙な依頼を受けたんですけど、他に入る方法がないものですから、分かりましたと言ってダイヤモンド・プリンセスに入ったわけです。

ダイヤモンド・プリンセス号の中の状況

入ってご挨拶をして、最初は「この人の下につけ」と言われた方にずっと従っているのかなと思ったら、DMATのチーフドクターとお話をして、そうすると「お前にDMATはなにも期待していない。どうせ専門じゃないし」ということで。

「お前は感染の仕事だろう。だったら感染の仕事をやるべきだ」ということで助言をいただきました。DMATの現場のトップの方ですね。

「あ、そうなんですか」と。私はとにかく言う事を聞くと約束してましたので。「感染のことをやれ」と言われた以上はやりましょう、ということで。現場の案内をしていきながら、いろんな問題点を確認していったわけです。

それはもう、酷いものでした。この仕事を20年以上やってきてですね。アフリカのエボラとか中国のSARSとか、いろんな感染症と立ち向かってきました。もちろん身の危険を感じることは多々あったわけですけど、自分が感染症にかかる恐怖っていうのはそんなに感じたことがないです。

どうしてかっていうと、僕はプロなので。

自分がエボラにかからない方法、SARSにかからない方法を知っているわけです。あるいはほかの人をエボラにしない、SARSにしない方法とか。

施設の中でどういう風にすれば感染がさらに広がらないかっていうことを熟知しているからです。それが分かっているから、ど真ん中にいても怖くない。

アフリカにいても、中国にいても怖くなかったわけですが、ダイヤモンド・プリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました。これはもう、COVID-19に感染してもしょうがないんじゃないか、と本気で思いました。

レッドゾーン・グリーンゾーン

レッドゾーンとグリーンゾーンっていうんですけど、ウイルスが全くいない安全なゾーンとウイルスがいるかもしれない危ないゾーンをきちっと分けて。

レッドゾーンではPPEという防護服をつけ、グリーンゾーンではなにもしなくていいと。こういう風にきちっと区別することによってウイルスから身を守るのが我々の世界の鉄則なんです。

ところがダイヤモンド・プリンセスの中はですね、グリーンもレッドもぐちゃぐちゃになっていて、どこが危なくてどこが危なくないのか全く区別がつかない。

どこにウイルスが・・・ウイルスって目に見えないですから、完全な区分けをすることで、はじめて自分の身を守るんですけど。もう、どこの手すり、どこのじゅうたん、どこにウイルスがいるのかさっぱり分からない状態で。

いろんな人がアドホックにPPEをつけてみたり、手袋をはめてみたり、マスクをつけてみたり、つけなかったりするわけです。

クルーの方もN95(高性能マスク)をつけてみたり、つけなかったり。熱のある方が自分の部屋から歩いて医務室に行ったりするということが通常で行われているということです。

私が聞いた限りではDMATの職員、それから厚労省の方、検疫官の方がPCR陽性になったという話はきいていたんですけど、それは「むべなるかな」と思いました。

感染への恐怖

中の方に聞いたら「我々、自分たちも感染すると思ってますよ」と言われてびっくりしたわけです。

どうしてかというと、我々がこういう感染症のミッションに出る時は、必ず自分たち医療従事者の身を守るっていうのが大前提で。自分たちの感染のリスクをほったらかしにして患者さんとか一般の方々に立ち向かうっていうのはご法度。ルール違反なわけです。

環境感染学会やFETPが入って数日で出ていったっていう話を聞いた時に、どうしてだろう?と思ったんですけど、中の方は「自分たちが感染するのが怖かったんじゃない」とおっしゃっていた人もいたんですが。その気持ちはよくわかります。

なぜならば感染症のプロだったら、あんな環境にいたらものすごく怖くてしょうがないからです。僕も怖かったです。

いま某、ちょっと言えない部屋にいますけど、自分自身も隔離して診療も休んで、家族とも会わずに。でないとやばいんじゃないかと個人的にはすごく思っています。いま私が COVID-19ウイルスの感染を起こしても、まったく不思議ではない。

船内の感染管理

どんなにPPEとか手袋があっても、安全なところと安全じゃないところをちゃんと区別できていないと、そんなものはなんの役にも立たないんですね。

レッドゾーンでだけPPEをきちっとつけて、それを安全に脱ぐということを遵守してはじめて自らの安全が守れる。自らの安全が保障できない時、守れない時に、他の方の安全なんか守れない。

今日は藤田医科大学に人を送ったり、搬送したりっていうのでみなさんすごく忙しくしてたんですけど、そうすると、検疫所の方と一緒に歩いていて、ヒュッと患者さんとすれ違ったりするわけです。

「あ! 今、患者さんとすれ違っちゃう!」と、笑顔で検疫所の職員が言っているわけですよね。

我々的には超非常識なこと平気でみなさんやっていて、みんなそれについて何も思っていないと。聞いたら、そもそも常駐してるプロの感染対策の専門家が一人もいない。時々いらっしゃる方はいるんですけど、彼らも結局「ヤバいな」と思ってるんだけど何も進言できないし、進言しても聞いてもらえない。やっているのは厚労省の官僚たちで、私も厚労省のトップの人に相談しました。話しましたけど、ものすごくイヤな顔されて、聞く耳持つ気ないと。

で、「なんでお前がこんなとこにいるんだ」、「何でお前がそんなこと言うんだ」みたいな感じで知らん顔するということです。非常に冷たい態度を取られました。

下船まで

DMATの方にもそのようなことで、「夕方のカンファレンス(会議)で何か提言申し上げてもよろしいですか」と聞いて、「まあ、いいですよ」という話をしてたんですけど、突如として夕方5時ぐらいに電話がかかってきて、「お前は出て行きなさい」と。

検疫の許可は与えない。まあ、臨時の検疫官として入ってたんですけど「その許可を取り消す」ということで、資格を取られて検疫所の方に連れられて、当初電話をくれた厚労省にいる人に会って「なんでDMATの下でDMATの仕事をしなかったの」と、「『感染管理の仕事をするな』と言ったじゃないか」と言われました。

「DMATの方にそもそも『感染管理してくれ』って言われたんですよ」と話したんですけど、とにかく「岩田に対してすごいムカついた人がいる。誰とは言えないけどムカついたと。だからもう、お前はもう出ていくしかないんだ」と話をしました。

でも、「僕がいなかったら、いなくなったら今度、感染対策するプロが一人もいなくなっちゃいますよ」と話をしたんですけど、「それは構わないんですか」って聞いたんですけど。それからこのままだと、もっと何百人という感染者が起きてDMATの方も、DMATの方を責める気はさらさらなくて、あの方々はまったく感染のプロではないですから。

どうも環境感染学会の方が入った時にいろいろ言われて、DMATの方は感染のプロ達にすごくイヤな思いをしてたらしいんですね。それはまあ、申し訳ないなと思うんですけれども、別に彼らが悪いって全然思わない。専門領域が違いますから。

感染リスクの拡大

しかしながら、「彼らが実は恐ろしいリスクの状態にいる」わけです。「自分たちが感染する」という、それを防ぐこともできるわけです。方法はちゃんとありますから。ところが、その方法が知らされずに自分たちをリスク下においていると。そして、そのチャンスを奪い取ってしまうという状態です。

それで、彼らは医療従事者ですから、帰ると自分たちの病院で仕事をするわけです。今度はまた、そこから院内感染が広がってしまいかねない。

もうこれは・・・、大変なことでアフリカや中国なんかに比べても全然ひどい感染対策をしているし、シエラレオネの方がよっぽどマシでした。

日本にCDC(疾病対策センター)がないとはいえ、まさか「ここまでひどい」とは思ってなくて、もうちょっと、ちゃんと専門家が入って、専門家が責任を取って、リーダーシップを取って、ちゃんと感染対策についてのルールを決めて、やってるんだろうと思ったんですけど、まったくそんなことはないわけです。もうとんでもないことなわけです。

これ英語でも収録、つたない英語で収録させていただきましたけど、とにかく多くの方にダイヤモンド・プリンセスで起きていることをちゃんと知っていただきたいと思います。

できるならば学術界とかですね、あるいは国際的な団体がですね、日本に変わるように促していただきたいと思います。彼らはまあ、残念ながら・・・(携帯電話の着信で中断)

情報公開の重要性

編集が下手でちょっと変なつながりになったと思いますけれども、考えてみると、2003年のSARSの時に、僕も北京にいてすごい大変だったんですけど、特に大変だったのは、やっぱり「中国が情報公開を十分してくれなかった」というのがすごく辛くて、何が起きてるのかよくわからないと。北京にいて本当に怖かったです。

でも、その時ですら、もうちょっときちっと情報は入ってきたし、少なくとも対策の仕方は明確で、自分自身が感染するリスク、SARSは死亡率10%で怖かったですけれども、しかしながら今回のCOVID-19、少なくともダイヤモンド・プリンセスの中のそのカオスの状態よりは、はるかに楽でした。

で、思い出していただきたいのは、COVID-19が中国・武漢で流行り出した時に、警鐘を鳴らしたドクターが、ソーシャル・ネットワークを使って「これはヤバイ」ということを勇気を持って言ったわけです。

昔の中国だったら、ああいうメッセージが外に出るのは絶対許さなかったはずですけど、中国は英BBCのニュースなんかを聞くと、やっぱりopenness(公開性)とtransparency(透明性)を大事にしているとアピールしてます。

それがどこまで正しいのかどうか僕は知りませんけど、少なくとも透明性があること、情報公開をちゃんとやることが、国際的な信用を勝ち得るうえで大事なんだってことは理解しているらしい。中国は世界の大国になろうとしてますから、そこをしっかりやろうとしている。

ところが日本は、ダイヤモンド・プリンセスの中で起きていることは全然情報を出していない。

データ管理の徹底

それから、院内感染が起きているかどうかは、発熱のオンセット(事象の起こる日時と温度)をちゃんと記録して、それからカーブを作っていくという統計手法「epi-curve」というのがあるんですけど、そのデータは全然取ってないということを、今日教えてもらいました。

検査をした、PCR検査をした日をカウントしても、感染の状態は分からないわけです。このことも実は厚労省の方にすでに申し上げてたんですけど。何日も前に。全然されていないということで、ようは院内の感染がどんどん起きてても、それにまったく気付かなければ、気付いてもいないわけで、対応すらできない。で、専門家もいないと。グチャグチャな状態になったままでいるわけです。

このことを日本のみなさん、あるいは世界の皆さんがを知らぬままになっていて。特に外国のみなさんはそうやって、かえって悪いマネジメントでずっとクルーズの中で感染のリスクに耐えなきゃいけなかったということですね。

やはり、これは日本の失敗なわけですけど、それを隠すともっと失敗なわけです。

たしかに「マズイ対応であるということがバレる」というのはそれは恥ずかしいことかもしれないですけど、これを隠蔽すると、もっと恥ずかしいわけです。やはり情報公開は大事なんですね。誰も情報公開しない以上は、ここでやるしかないわけです。

ぜひこの悲惨な現実を知っていただきたいということと、ダイヤモンド・プリンセスの中の方々、それからDMATやDPAT(災害派遣精神医療チーム)や厚労省の方々がですね、あるいは検疫所の方がもっとちゃんとプロフェッショナルなプロテクションを受けて、安全に仕事ができるように。彼ら、本当にお気の毒でした。

ということで、「まったく役に立てなくて非常に申しわけない」という思いと、この大きな問題意識をみなさんと共有したくて、この動画を上げさせていただきました。

岩田健太郎でした。

高山医師の大人な対応が話題

岩田教授の投稿した動画に対して、動画内で“厚生省で働いている某氏”は自分であると名乗り出た高山義浩医師が自身のFaceBookで岩田教授の動画の矛盾点をあげています。

わたしは医療知識や感染症などについて素人ですが、岩田教授の言っていることも高山医師の言っていることも一理あるような気がしました。

クルーズ船とはいえ、多くの方が乗船している限られたスペースでどれだけのことが出来たのか。政府の初動対応が後手後手にまわってしまったことは明らかですが、実際に現場で懸命に作業に従事してくださる方は最善と思うことをしてくださっている。

ほんとうに難しい問題ですが、これ以上被害が拡大しないようにわたしたちもしっかり自衛しなければいけません。

高山医師に岩田教授が反論

高山医師のFaceBookでの指摘に対し、岩田教授が反論しています。

このふたりの応酬によって、世間では困惑の声があがっています。

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